秘書の仕事にハマった愛知移民

勝手に秘書に任命され、泣きながら始めたものの、いつの間にか秘書の仕事にどっぷり。ただ今後、担当者として会社の本業に深く関わるお仕事をしてみたかったので、2015年6月、ボスの引退とともに秘書業を卒業しました。これから秘書になりたい人や、突然秘書になれと命令された人のために、秘書の仕事で得たものを書き残します。ちなみに手土産になるお菓子リサーチは、もはや趣味でやるノリになってしまったので、今後もゆるゆる続くと思われます。気が向いたら紹介していきます~

「恐れ入ります」を使いこなす「ありがとうございます」「申し訳ございません」との違い

 

秘書の仕事を始めてからは、いわゆる「クッション言葉」を多用していました。ストレートすぎる表現では相手に不愉快な思いを抱かせてしまいそうなシーンで、表現を和らげるために使います。

クッション言葉を用いることによって、相手の気持ちに配慮を示しながら伝えるべきことを伝え、円滑にコミュニケーションをとることができます。

 

もちろんたくさんのクッション言葉を活用できれば良いのですが、日常生活には馴染みのない言葉もあるので、使い慣れるまではサラッと出てこないです。

一つずつ意識的に使っていくとすれば、最初に攻略すべき言葉は、やはり「恐れ入ります」だと思います。

秘書の特徴である以下3点を考慮すると、秘書にとっては非常に便利だからです。

 

1. 格上の人たちと頻繁に接する環境

2. お願いごとやお礼、謝罪をきちんと伝えることが求められる

3. 相手に不愉快な思いを抱かせない対応が必要

 

なお、「恐れ入ります」の意味を調べてみると、三省堂大辞林には、こう書かれていました。

1. 自分とって過分と思われる目上の人の行為に対しての感謝の気持ちをあらわす挨拶。大変ありがとうございます。

2.〔「おそれいりますが」の形で〕 目上の人や客などに,迷惑や骨折りに対して「申し訳ない」という気持ちでいう語。大変申し訳ありません。 「 -が,お名前をお教えいただけませんでしょうか」

 

つまり、整理するとこう。

 

目上の人の行為に対して使う言葉である

→自分と同格かそれ以下の人や、自分自身が行う行為に対しては使いません。

 

ありがたい気持ちと申し訳ない気持ちのときに使う言葉である

→それぞれの使い方を以下に書いてみます。

 

 

まず、ありがたい気持ちのときに使う場合。

 

目上の人やお客様にちょっとした配慮をしていただいたとき。

例えば、エレベーターでウッカリ譲られちゃったようなとき。

サラッと「ありがとうございます」では、やってもらって当然というニュアンスに受け取られかねないので、自分には過分なことである、というニュアンスが欲しいところ。「大変ありがとうございます」では相手のちょっとした配慮に対してリアクションが大袈裟すぎる、ということで、もっとスマートな言葉が欲しいところ。

そこで、「恐れ入ります」が使えると、相手に対してへりくだりつつ、スマートかつ丁寧に感謝の気持ちを伝えられます。

 

目上の人から褒められたとき。

例えば、「お美しいですね。」と言われ、「ありがとうございます」では不遜な印象を与えてしまいそうで、謙遜したいところではあるものの「そのようなことはございません」のように否定するようなことを言うと、せっかく褒めてくれた相手の気を悪くしてしまいそうな場合。「とんでもないことでございます。」という言葉も使えますが、「いやいや、…」と、しつこく言われることもあります。

こんな困った状況のときに使えるお助けワードが、「恐れ入ります」です。謙遜のニュアンスを含めてサラリとお礼を伝えて終わらせることができます。

 

 

次に、申し訳ない気持ちのときに使う場合。

海外の人が、日本人に対して「日本人はスミマセンを使いすぎ。自国でアイムソーリーを使うのは自分の非を認めたときだけ。」というコメントをすることがあります。日本人の中にも、自分が悪いことをしたわけでもないのに「申し訳ありませんが」や「すみませんが」を使うことに違和感を感じている人もいます。

 

しかしながら、例えば相手に対して面倒なことをお願いする場合は、迷惑をかけて申し訳ない…と負い目を感じますよね。お願いされた方だって、面倒なことを当然のようにお願いされると腹が立ちます。目上の相手に場合は特にですが、お願いして動いていただくからには、自分自身に非があるわけでなくても、手を煩わせて申し訳ないといったような気持ちは表現した方が、お互いのコミュニケーションが円滑になります。

 

外国人は、アイムソーリーを使わないでどうしているかというと、やはりクッション言葉のようです。Excuse me, but …だとかIf you don’t mind…だとかを使って、申し訳なさや遠慮がちなニュアンスを表現しています。「日本人はスミマセンが多い」という指摘は、何でもかんでも「スミマセン」をクッション言葉の代わりに使っているような状態のことを指していたのではないかと…微妙なニュアンスを含めて表現できるクッション言葉を使うことによって、このような誤解を解消することができるようになります。

 

具体的なシチュエーションだと、アポなしのお客様に「本日はお引き取りいただけますでしょうか」「お名前をおっしゃっていただけますでしょうか」と言うとキツい印象があります。とはいえ、こちらの落ち度があるわけでもなく、「申し訳ありませんが」と言うのも違和感がある…

そのような場合に、「恐れ入りますが」が便利です。こちらに落ち度はないけれども、相手を煩わせることや、自分の言葉で不快感を抱かせてしまうかもしれないことに対する申し訳なさを表現するために「恐れ入りますが、本日はお引き取りいただけますでしょうか」「恐れ入りますが、お名前をおっしゃっていただけますでしょうか」と伝えます。

 

なお、このときに使う「恐れ入りますが」の便利なところは、自分の立場としてはへりくだっているくせに、お願いの内容にわりと強めの強制力を持たせることができるところです。相手を尊重してへりくだりながらも、「帰ってくれ」「名乗ってくれ」と明確に伝え、相手にそれをしない選択肢を与えていません

 

相手が動いてくれなくても問題ないお願いをする場合は、「お差し支えなければ」「もしもよろしければ」などのように、相手に選択してもらうような表現が優しいです。

 

このように「恐れ入ります」などのクッション言葉は、相手への配慮をスマートに表現したり、苦しい状況を乗り切ったりするための便利アイテムです。積極的に使うべし。

 

本日は、以上です。